詰将棋を解く際に意識するべきこと

詰み筋を覚える

 前回の記事では「なぜ詰将棋を解くと将棋が強くなるのか」について解説し、その中で「詰みの形を覚える」ことが重要だという話をしました。詰みの形とは前回説明した「頭金」等の既に詰んでいる形のことで、その形を見た時に細かい指し手を読まなくても相手玉が詰んでいることが分かれば、詰みの形を覚えたと言えます。初級者の方は、まずは何度も一手詰めを解くことで、詰みの形を覚えることを目指しましょう。もちろん完璧に網羅する必要は無く、100~200問ほど一手詰めを解けば何となく詰みが見えるようになってきますので、それで十分です。数分考えても分からない問題は答えを見てしまっても大丈夫ですが、その場合は印をつけておき、しばらく時間をおいてから解き直すようにしてください。
 そして、何となく詰みの形が分かるようになってきた方は、次に「詰み筋を覚える」ことを意識してみましょう。詰み筋とは「相手玉を詰みの形に持っていくために有効なよく出てくる手筋*」のことで、三手~七手詰めの詰将棋を解くことで身につけることができます。手数が長いほど複数の詰み筋を組み合わせる必要があるため、まずは三手詰めから取り組むようにしてください。
 今回の記事では具体例を見ながら「詰み筋を覚える」とはどういうことなのかについて説明していきたいと思います。

* 手筋とは駒を効率良く使うことができる指し方のこと

一間龍

詰み筋はたくさんありますが、その中でも特に重要かつ頻出する手筋の1つとして「一間龍」という手筋があります。解説の前に、まずは以下に三手詰めの詰将棋を考えてみてください。
(最後に合駒を取るところまで覚えて欲しいので、あえて駒余りの詰みにしています。このように駒余りや余詰めのある詰将棋を実戦詰将棋と呼びます。)

問題①

※三手詰め(駒余り)

【答え】3三金、2一玉、3二龍または3二金まで

 初手3三金と打つ手が正解です。このように自分の龍と相手の玉の間に相手の守り駒が1枚ある場合に、3三や3一に駒を打って王手する形を「一間龍」と呼びます。
 相手の金や玉の利きに駒を打つため、一間龍の形を知らないと中々気づきにくい手だと思います。ぱっと見ると、3二の金で3三に打った金や4二の龍が取られそうに見えますが、よく考えてみるとどちらも取ることができません。
 3三金に同金なら2二龍、3三金に同玉なら同龍、3三金に4二金なら2二金とどのように応じても2二の玉を取ることができます。
 したがって相手は2一玉と逃げるしかありませんが、3二龍または3二金と相手の金を取ってしまえば詰みになります。

問題②

※三手詰め(駒余り)

【答え】3二金、1一玉、2二龍または2二金まで

 初手3二金と打つ手が「一間龍」の手筋で正解です。一間龍には横の一間龍と縦の一間龍がありますが、どちらにせよ自分の龍と相手の玉の間に相手の守り駒が1枚ある形であれば概ね成立すると覚えていただいて問題ありません。
 この問題図から3二金と打った形も一間龍の形となっており、3二金に同金なら2一龍、3二金に同玉なら同龍、3二金に2三金なら2一金とどのように応じても2一の玉を取ることができます。
 したがって相手は龍も金も取れず、1一玉と逃げるしかありませんが、2二龍または2二金と相手の金を取ってしまえば詰みになります。

送りの手筋

一間龍と相性の良い手筋として「送りの手筋」という手筋があります。先ほどと同様にまずは以下の問題を考えてみてください。

問題③

※五手詰め

【答え】4二金、同玉、6二龍、5二金、3二金まで

 初手4二金と捨てる手が正解です。このようにわざと自分の持ち駒を捨てて相手の玉に取らせることで玉の位置をずらし、6二龍と相手の守り駒を取ることを狙う手を「送りの手筋」と呼びます。
 4二金に対して相手は同玉と金を取るしかありませんが、玉が移動したことで6二の金を取ることができるようになります。6二龍と金を取る手に対して、相手も5二金ともう一度金を打って玉を守ってきますが、反対側から3二金と打てば詰みとなります。

問題④

※五手詰め

【答え】2二金、同玉、4二龍、3二金、3一銀まで

 初手2二金と打つ手が「送りの手筋」で正解です。送りの手筋は一間龍との相性が良く、送りの手筋の後に一間龍の形になることがよくあります。
 問題図から2二金と打つ送りの手筋に対して、相手は同玉と取るしかありませんが、送りの手筋の効果で4二龍と相手の銀を取ることができます。そして、相手が玉を守るために3二金と合駒した図は一間龍の形になっており、3一銀と打つと玉でも金でも3一の銀を取ることができずに詰みになります。

隙間を作る手筋

次の詰み筋は少し難易度が高い手筋です。一間龍のような決まった名称が無いので、仮に「隙間を作る手筋」と呼びます。以下の問題を考えてみてください。

問題⑤

※五手詰め(駒余り)

【答え】3四桂、同歩、3三金、2一玉、3二龍または3二金まで

 初手3四桂と捨てる手が正解です。このようにわざと持ち駒の桂を捨てて相手に取らせることで守り駒の位置をずらし、その隙間に駒を打ち込むことを狙う手を「隙間を作る手筋」と呼びます。
 相手は玉を逃げると2二金と打ち込まれて詰んでしまうため、同歩と桂馬を取るしかありませんが、相手の歩が移動したことで3三の地点に隙間ができ、駒を打つことができるようになります。その後、一間龍の形をいかして3三金と打つ手が決め手となり、詰みとなります。

問題⑥

※五手詰め(駒余り)

【答え】7四桂、同歩、7三金、9二玉、7二龍まで

 初手7四桂と打つ手が「隙間を作る手筋」で正解です。隙間を作る手筋も一間龍と相性が良く、一間龍の形を作るために桂馬を捨てる手が実戦でも良くでてきます。
 問題図から7四桂と隙間を作る手筋に対して、相手は同歩と取るしかありませんが、7三の地点に隙間ができたことで7三金と打ち込むことができます。一間龍の形になっているため、相手は8一玉か9二玉と逃げるしかありませんが、どちらに逃げても7二龍と銀を取って詰みになります。

複数の詰み筋を組み合わせる

最後に複数の手筋を組み合わせた問題にチャレンジしてみましょう。初見では難しいかもしれませんが、ここまでの問題を解いてきた方なら正解できると思います。ヒントは「一間龍」「送りの手筋」「隙間を作る手筋」を全て使います。

問題⑦

※九手詰め(駒余り)

【答え】2二金、同玉、4二龍、3二金、3四桂、同歩、3三金、2一玉、3二龍または3二金まで

 初手4四桂と捨てる手は同歩と取られた後、4三金と一間龍の形にしても、2一玉と逃げられて詰みません。したがってこの場合は2二金と先に送りの手筋を使うのが正解となります。
 相手は同玉と取るしかありませんが、送りの手筋の効果で4二龍と相手の金を取ることができます。相手は3二金と合駒しますが、今度は3四桂と隙間を作る手筋を使います。今度も相手は同歩と桂馬を取るしかありませんが、3三の地点に隙間ができました。最後は一間龍の手筋で3三金と打つ手が決め手となります。

終わりに

 いかがだったでしょうか。「一間龍」も「送りの手筋」も「隙間を作る手筋」もこの詰み筋を知らない人にとっては中々見えにくい手だと思います。しかし、何度も何度も詰将棋を解いて、これらの詰み筋を体で覚えてる人にとっては、どれもひと目で見えるようになっているでしょう。
 最後の問題も3つの詰み筋を知らない人にとっては、簡単には解くことができない難しい問題になっていると思います。しかし、事前に3つの詰み筋を覚えた皆さんにとっては、それほど難しくは感じなかったのではないでしょうか。
 このように、詰将棋を解く際は「この問題はどんな詰み筋を使っているか」ということを意識することで、より効果的に学習することができます。ぜひ今後詰将棋を解く際は、詰み筋を意識しながら解いてみてください。

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